俺は一つ盛大にため息をついた。昨夜の俺の判断は決して良いと言えるようなものではなかった。所詮はならず者。まとめるなんてことはできようハズもなかったんだ。……否、俺と余裕で一回り以上差があるようなチビ達でさえ、自分の意見を明確に述べているんだ。ここでイイ大人がそれを出しちゃあモリーに会わせる顔もねェ。
 しかも狼でありえないからといってアルビンにまとめ役を押し付けるような形になっちまった。この最悪な時期にだ。俺が一番最悪だ。
 ギリッと手の平に爪を喰い込ませるよう強く握った。視線だけでぐるりと宿にいる連中を見回す。皆疲れが出始めている。この中に人狼がいるなんて正直考えらんねェ。だがゲルトとモリーが死んじまったのは事実だ。今日誰が襲われるともわかんねェ。いや、人狼も頭は俺なんかよりずっといいんだ。この中にホントにいるならな。それなら考えて喰うだろう。誰が襲われるか予測できない訳じゃないハズだ。
 俺はその時、直感とも呼べる予測がついた。イヤな感じがする。それだけだったが。

 今夜は、俺だ。

 そう思った途端、いてもたってもいられなくなった。人狼が個人を襲撃するとも限らねぇんだ。この宿が今襲われたら……考えたくもねェ。
 いいだろう。妙な方向に村を追いやっちまった分、俺がエサになってやる。
 俺は乱暴に席を立った。
「そこらフラついてくる。夜明けぐれぇには帰るぜ。多分な」
「ディーター」
 自称ネタ師見習いにひきとめられる。あァ、と声だけで返す。
「まだ本決定了解時のネタ、言ってないよ」
 そう言えば、そうだ。確かに言っていない。瞬間、こんな時にと思ったが案外こんな時だからこそ笑いが必要なのかもしれない。気持ちが沈みがちな今こそ。時間はまあある。どうせ最後になるかもしれねぇんだ、言ってやろう、と思ったが俺の頭はエンターテイナー思考ではなかった。この場を和ませるようなネタなんて一つも思い浮かばない。
 二、三秒考え自分の呼称を思い出す。誰がつけたんだか。
 ふん、と一つ鼻で笑った。
「奈良漬者ディーター。遺言になるかもしれんことを薄ら寒いシャレで締める……」
 言ってから奈良漬の酒粕の味が口に広がった。


 ……待てよ?

 ここって、ドイツだよなァ……?


 まあいい、吟味する時間はない。明日生きていたら考えよう。
 俺は宿を出た。

 次の日の朝、奈良漬者 ディーターが無残な姿で発見された。
 彼がどこで奈良漬を知ったのか、もはや知る事は出来ない。
 ……ちゃんちゃん♪(強制終了。)



ということで唐突にギャグver.
日本人形も出てきたし、いいのかな(笑)


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