俺は一つ盛大にため息をついた。昨夜の俺の判断は決して良いと言えるようなものではなかった。所詮はならず者。まとめるなんてことはできようハズもなかったんだ。……否、俺と余裕で一回り以上差があるようなチビ達でさえ、自分の意見を明確に述べているんだ。ここでイイ大人がそれを出しちゃあモリーに会わせる顔もねェ。
 しかも狼ではありえないからといってアルビンにまとめ役を押し付けるような形になっちまった。この最悪な時期にだ。俺が一番最悪だ。
 ギリッと手の平に爪を喰い込ませるよう強く握った。視線だけでぐるりと宿にいる連中を見回す。皆疲れが出始めている。この中に人狼がいるなんて正直考えらんねェ。だがゲルトとモリーが死んじまったのは事実だ。今日誰が襲われるともわかんねェ。……いや、人狼も頭は俺なんかよりずっといいんだ。この中にホントにいるならな。それなら考えて喰うだろう。誰が襲われるか予測できない訳じゃないハズだ。
 俺はその時、直感とも呼べる予測がついた。イヤな感じがする。それだけだったが。

 今夜は、俺だ。

 そう思った途端、いてもたってもいられなくなった。人狼が個人を襲撃するとも限らねぇんだ。この宿が今襲われたら……考えたくもねェ。
 いいだろう。妙な方向に村を追いやっちまった分、俺がエサになってやる。
 俺は乱暴に席を立った。
「そこらフラついてくる。夜明けぐれぇには帰るぜ。多分な」
「ディーター」
 自称ネタ師見習いにひきとめられる。あァ、と声だけで返す。
「まだ本決定了解時のネタ、言ってないよ」
 そう言えば、そうだ。確かに言っていない。瞬間、こんな時にと思ったが案外こんな時だからこそ笑いが必要なのかもしれない。気持ちが沈みがちな今こそ。時間はまあある。どうせ最後になるかもしれねぇんだ、言ってやろう、と思ったが俺の頭はエンターテイナー思考ではなかった。この場を和ませるようなネタなんて一つも思い浮かばない。
 二、三秒考え自分の呼称を思い出す。誰がつけたんだか。
 ふん、と一つ鼻で笑った。
「奈良漬者ディーター。遺言になるかもしれんことを薄ら寒いシャレで締める……」
 言ってからちと後悔した。無反応だったら自分が憐れすぎる。俺は何か言われる前に次の言葉を言いつくろった。
「ってな。明日、誰も死なねぇといいな」
 後ろは振り返らず宿を出る。数日前は吹雪いていた夜明け前の風は、身に染みて痛かった。息が白い。もうすぐ、夜が明ける。東の空がわずかに色を変え、星の輝きを奪いつつあった。
 無為に歩いたと思っていたが気付けば一昨日作ったばかりのウパパーの墓の前だった。
 飾るような花もわかんねえから、ただ土が盛り上がり、大き目の石がおいてあるだけの素っ気無い墓。それを見下ろすといらねえ哀愁までこみ上げてくる。
「ウパパー、俺は何かの役に立ったか?この村を少しでも良い方向に向かわせられたのか……?」
 自分の中で答えは出ている。
 けれど答えてくれる白い友はもういない。ニコラスが自身の白い友達を紹介してくれるとは言っていたが、もうしばらくウパパーのことは忘れる事ができなさそうだ。俺は白い息をもう一度吐……、

 背中 に 鈍い 衝撃 が 疾っ た。

 白い、息に、赤い、赤……、















 人狼か。















 俺はとっさに振り返りその姿を脳裏に焼き付けようとした。
 抵抗しようとした。
 しかし、すぐに、振り返った背と今度は腹に二つ の 鈍痛  が    き





































ホラー(?)って書いた事(読んだ事もあまり…)ないので…緊迫感なかったらすみません。
暗くってすみません。
走馬灯でも駆け巡らせた方がよかったのかなーとも思いますが(皆への思いも書いてみたかった)、死はやっぱり突然だったんだろうと思います。うん。
ちなみに人狼の顔が拝めなかったのは、墓下逝った自分が人狼の正体わかんなかったからです。
暗いの読んで気分悪くなったわ!!って人はギャグ(?)ver.もありますので、よろしければ。

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