間3 仲間・刺客


 「あいつもあいつと一緒にいる奴等ももう殺っちゃってもいいんじゃねぇ?目障りだろ」
 浅黒い肌と赤い短髪を持つ男が言った。
「そうだよっ、あんなウラギリ者。早く殺しちゃえばいいんだ」
 年端の行かぬ少年が言った。
 この部屋にいるのは、ギルバーツと彼ら二人の合わせて三人だ。
 裏切り者とそしてその裏切り者と一緒にいる者。それが誰か名を聞かずとも分かったギルバーツはふっと笑った。
「まあ、そんなに急ぐ事でもないだろ?あともう少しだ。あいつらに邪魔できるとは思っていないよ。どんなに足掻いたって得られない情報はあるものだしね。それとクリーム、あんまり殺すとか言っちゃいけない。まだ子供なんだからさ」
 ギルバーツはクリームと呼んだ少年の淡い金髪をわしわしとかきまわした。
 クリームは不服そうにギルバーツを見上げる。
「いいじゃん、別に。サイの兄だって殺るっていってるよ」
「まあガキはガキらしくしとけっつーことだろ」
 赤髪がケタケタと笑う。
 クリームはサイと呼んだ赤髪の脛を思い切り蹴った。しかしあっさりとかわされる。
 ギルバーツはそれを見て微笑んだ。
 仮初の時間。傷をなめあっているだけの時間。しかしそれが辛くなくてはいけないはずがない。
 自分たちにも幸せはあっていいはずなのだ。
 もっともここに集っている者は世界の終焉を至上の幸福とみなしている。
「しかし、あいつらを野放しにしとく訳にもいかないんだよな。サイ、見張っておいてくれ。基本的に手は出すなよ」
「へーへー。我等が主はお優しいこってすな」
「いや、そうでもないさ。いいか、基本的には手を出すな。けど、もし本格的に聖地の解の邪魔をするようであれば」
 サイの瞳が鋭く光った。
「殺れ、ってことだな」
「ああ」
 ギルバーツは深く頷いた。その顔に先ほどまでの優しげな微笑はない。感情を一切排除したような表情。
「ギルの兄、僕は?僕は?」
 クリームがギルバーツの正面で今にも飛び跳ねんばかりに期待に目を輝かせている。
「クリームは待機」
「ええー」
 クリームは頬を膨らませて抗議した。
「僕頼りにならないっての?」
「いや、頼りに思ってるよ」
 ギルバーツは苦笑いを浮かべる。これ以上追及されてはたまらないとサイに視線を向ける。頼りに思っているのは事実だ。
 この二人もまた封印を解く鍵だ。
 そして解き終えた今も自分に付き従ってくれている。
「じゃあ、気をつけて行ってきてくれ」
「違う違う、そういう時は薄ら笑いを浮かべながら『行け』って低い声で言うんだよ。そしたら俺はカッコよくお前の前から消えてやるからさ」
 サイが弾んだ声で言う。それを聞くとまるきり悪の親玉だな、俺は、とギルバーツは笑った。
「悪の親玉、か。世界から見れば俺はまさしくそれなんだろうな。いいや。じゃあ、サイ。行け」
 サイはにやりと笑うと言葉どおりその場から一瞬にして姿を消した。

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