間2 未練・決別

 あと、少し。
 ギルバーツはしばらく己が手を見つめて、そしてぐっと握り締めた。
 現段階の報告では残りの封印は三つ。それが終わりさえすれば、統べる者の解放ができる。そうすれば、世界は。
 やり遂げると決めたからにはやり遂げる。
 それが彼自身に出来る事であり、彼自身にしか出来ない事なのだ。
 どんな卑怯な手をつかってもやり遂げる価値のあること。
「卑怯、か。世界を滅ぼすのに卑怯も何もないな」
 仲間に調査してもらっているケシーとリシアの動向は今のところ計画には支障が無いようだった。
 あくまで今のところだ。邪魔するつもりは十分にあるらしい。
「黙っていればいいものを」
 黙っていれば、気がついた時にはもう世界が終わっているというのに。悩む必要も苦しむ必要もない。全ては一瞬で無へと帰す。厭うた己が身すらも。
 その瞬間まであと少しなのだ。
 十数年にも渡り編み上げてきたこの計画。賛同してくれる仲間もできた。もっともいつかは皆無となるのだからどうといった感慨も無い。
 そしてついこの前計画の歯車を急速に回転させ始めた。
 一人の邪魔な男を殺す事によって。
 拳を更に強く握る。
「ファーマスはこの手で殺した」
 それは全てとの決別を表す。
 こんなにも冷たい世界に思い残す事はもう何もない。
 未練は断った。

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